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2009年04月22日 インプラント 今昔物語その5(実質その4)

インプラントの種類にどういう意味があるのでしょうかというテーマでの論文紹介が、「今昔物語 その4」の途中から用語説明で止まっていたので、その続きから。

「チタン製インプラント周囲の骨頂部の変化
~イヌの下顎における非荷重の歯肉貫通法および歯肉下埋入法インプラントの組織学的評価~」
Crestal bone changes around titanium implants
~A histometric evaluation of unloaded non-submerged and submerged implants in the canine mandible~ J. Periodontol. 2000 71(9):1412-24

Hermann JS, Buser D, Schenk RK, Cochran DL

この著者のBuser(ブーザー)先生はスイスの先生で、Buser切開という切開法で有名です。Cochran(コクラン)先生は、テキサス大学歯周病学講座の教授です。テキサス大学に明海大学の学生さんを引率して行ったときに1回だけ名刺交換したのですが、私のことは絶対覚えてくれてはいないでしょう。
このリンクの写真の後ろの方に小さく私の頭が見えます。

開発されてからしばらくの間のインプラントというのは、ネジ山がきってあるだけのツルツルの表面をしたものでした(いわゆるネジ)。その当時のインプラント治療の成功基準は、人工歯冠(アバットメント)を装着後1年以内の骨吸収が1.5 mm以下か、咬みあわせてから1年以降の骨吸収が0.2 mm以下であることとされておりました。もちろん、現在でもこの基準はゴールドスタンダードとなっております。しかし、今でこそインプラントは有歯顎者(歯の残っている人)に多く適応されている治療法ですが、当時は無歯顎者(全く歯の残っていない人)の下顎前歯部への適応ばかりでした。そのため、昔のインプラントの研究報告は、今からみると古くなってしまいました。

そこで、Buser先生とCochran先生は、現在流通しているタイプのインプラントについて、その種類と術式別に研究することを思いつきました。

話しがややこしくなるので、ここからの登場人物ならぬ登場するインプラントの種類を以下に示します。

1ピースタイプのインプラント
2ピースタイプのインプラント

ツルツル表面(機械研磨表面)のインプラント
ザラザラ表面のインプラント

1回法で埋入されたインプラント
2回法で埋入されたインプラント

この論文で使用している表面がザラザラのインプラントとは、ITIインプラントと呼ばれる種類のインプラントで、Sand-blasted,Large grid,Acid-etched(SLA)処理された表面を持つインプラントのことです。

5頭のフォックスハウンド(2歳,雄)という犬の下顎の歯を抜歯し,特別に作った6種類のインプラントを無作為に各10本埋入しました。実験期間終了後、インプラント周囲の組織を非脱灰切片を作成し、顕微鏡下で各測定値を計測したそうです。統計処理には、Student t 検定(ここは突っ込むところなのですが、あえて省略します)とF 検定を行いました。

フォックスハウンドは高さが60cmくらいの犬です。あまり日本では見かけないのですが、ラブと同じくらいの大きさです。

6種類のインプラントの内訳は、インプラントの上部数ミリがツルツル表面でそこから下はザラザラという2種類の表面を併せ持つものを作り、それぞれ1ピースあり2ピースありで作製し、骨に埋入する深さにもバリエーションを与えました。

ちなみに、現在リアルで使用されているほとんどのインプラントが上部数ミリがツルツル表面でそこから下はザラザラ表面です。これは、上から下までザラザラ表面のインプラントでは、歯垢がつきまくって大変だからなのだと思います。反対に、全部ツルツル表面だと骨がくっつきにくくなります。

結果は、1回法かつ1ピースタイプのインプラントでは、骨の吸収(下がり)がツルツル表面とザラザラ表面の境界から下(つまりザラザラ表面より下)には骨の吸収は見られませんでした。他の2ピースの実験条件では、どんな埋入条件でも2ピースに分かれる結合部付近あるいはそれ以上に骨が吸収していました。
つまり、インプラントを埋入後の骨の吸収は、2ピースインプラントの結合界面が原因であることがわかり、ザラザラ表面はインプラントと骨が密にくっつくには非常に有効であることがわかりました(正確には、示唆されました)。

この理由として彼らが考えたのは、2ピースなのでインプラントのネジの付け外しの力により骨が吸収するのではないかとか、結合部にバイ菌が入るせいではないかなどと推測しました。
この結果から考えると、1回法で1ピースタイプのインプラントが一番良いように思えます。しかし、1ピースタイプでは人工歯冠の付け替えが困難になりますし、2ピースタイプのインプラントでも骨の下がりは1 mmくらいです。それくらいではインプラントはびくともしません。要は、なにを捨て何を得るかの違いです。両者とも利点欠点がありますし、あくまで実験結果からの考察です。

いかがでしたでしょうか。ひょっとしたら論文2つ目でブログが頓挫するところでした。終りのわからないお話しほど嫌なものはないですよね。

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 インプラント用語 1ピース2ピース

インプラントには1ピースタイプと2ピースタイプとがあります。

広く使われているのは2ピースタイプのインプラントです。これは骨に埋入するパーツと人工歯冠のパーツの2つに分かれます。もともとインプラントは2回法で埋入する術式をとり、インプラントを埋めた後、傷口を閉鎖して3~4か月安静にしておく必要があるためです。

1ピースタイプのインプラントとは、骨に埋入する部分と人工歯冠となる部分とが一体になっているものをいいます。このタイプのインプラントは埋入後、傷口を完全閉鎖することができません。というより、もともと傷口を完全に閉鎖することを目的としているわけではなく、2回目の手術を省略することを目的のひとつとしています。

ちなみに私は1ピースタイプのインプラントは使ったことはありません。

トランスファー(インプラントの延長ネジ)って、削ると火花がでるんですよ。ちょっとびっくりします。

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください。

2009年04月21日 インプラント用語 インプラントの表面性状

インプラントの表面は、ツルツル表面(機械研磨表面)のタイプとザラザラ表面のタイプに分類することができます。といっても、現在主流となっているデンタルインプラントはすべてザラザラ表面のタイプだと言ってもよいでしょう。

なぜ、ザラザラの表面のインプラントが良いかというと、まず、骨と接触する面積が広がることです。次にフィブリン網がからみつきやすく、またザラザラ表面の細部にまで骨細胞が入るためであると考えられます(フィブリンがインプラント表面に骨細胞が集まるための足場の役割をすることの論文はこちら)。

インプラントの製品別の表面性状の名前は以下のとおり(たくさんあるので3社のみ)。

ノーベルバイオケア→TiUnite(タイユナイト)
Screw-Vent→MTX処理
ITI→SLA処理

ちなみに武田歯科医院では、Screw-Ventインプラントを使用しております。どの会社のインプラントが一番すぐれているかに関しては、正直なところ、すべてのインプラントを同一条件下で統計的に有意な数だけ実験した研究がないのでわかりません。

現在は、表面性状を加工するだけではなく、骨の成分に似た構造の結晶をインプラント表面にくっつけた製品が出ています(いわゆるHAインプラントと呼ばれております)。

もしかすると主要メーカー間ではチタン表面性状競争の差がつきにくくなったのかもしれません(注! これは個人的推測なので新しい知見がありしだい修正します)。

わかりやすく表現すると、…対フリーザ戦以降のドラゴンボール状態?
かえってわかりにくいかな。

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追記
医院の郵便受けに日本歯周病学会から雑誌の束が送られてきてました。中をあけると、「歯周病患者におけるインプラント治療の指針」という冊子が入っていました。パラパラと読んでみると、とてもわかりやすくまとまっており、いい本でした。これ作るの時間かかったろーなー。

2009年04月20日 インプラント用語 1回法と2回法

インプラント今昔物語その4から始めようとした論文なのですが、あまりにもページを用語解説に割かなければならないことが判明しました。そこで、別コーナーとして用語解説ページをつくり、本文中の用語に解説ページのリンクを貼っていき、ある程度のボリュームになったところで別コーナーにまとめていくという方法をとろうと思います。

以下、用語解説です。

1回法で埋入されたインプラント
2回法で埋入されたインプラント

これは、インプラントの術式の違いによる分類です。インプラントは、通常歯の無い部分の歯肉を剥離して骨にインプラントを入れます(この操作を埋め入れると書いて、”埋入、マイニュウ”と表現します。”マイウー”ではありません)。
本来インプラントは2回法で埋入されてきました。2回法とは、インプラントの手術を2回行いますよという意味です。1回目はインプラントを埋入するときです。この際歯肉切り目を入れ、インプラントを埋入した後、歯肉を縫合してインプラントが傷口の下にしっかり隠れるようにしてしまいます。そしてインプラントが骨ときちんとくっついたと思われる時期まで放っておきます。この間、だいたい3~4か月以上です。
2回目の手術は、歯肉の下に隠れているインプラントに、人工歯冠を接続するために行います。だって、歯肉の下にインプラントが隠れていますから、歯肉に穴をあけないと人工歯冠がくっつけられないじゃないですか。以上、これを2回法といいます。

では、1回法とは?
それは、インプラントを歯肉下の骨に埋入後、人工歯冠が最初からくっついている状態で縫合するのです。つまり、1回の手術で歯肉から人工歯冠が出ている状態で終わらせるのです。この方法は2回目の手術が不要ですので、1回法と呼びます。

おおまかな術式の違いがご理解いただけたでしょうか?
それぞれの術式の利点欠点は以下のとおりです。

2回法
利点 
インプラントが骨としっかりくっつくまでの間、歯肉下で安静にしておけ、感染の危険から遠ざけることができる。
骨をつくるオプションの手術が併用しやすい。

欠点
2回手術を行わなければならない。

1回法
利点
手術が1回ですむ。
する気になれば、すぐに歯を作ることができる。

欠点
埋入後のインプラントは常に口の中で食物や唾液などにさらされており、骨とくっつくまでの間に感染する可能性が2回法に比べて高い。
インプランント埋入後1か月の間は、インプラントはまったく骨とくっついてない期間となるので(論文再読のこと)、その間にインプラントの人工歯冠に外力がかかると、インプラントと骨がくっつかない可能性がある。
骨をつくるオプションの手術が併用しにくい。

いかがでしょう、ご理解いただけましたか?1回法と2回法、それぞれに特徴があります。とくに1回法は危険性が若干高い分、適応するかしないかの条件を選ばねばなりません。ただ、どちらが良いか悪いかではないということはご理解ください。あくまで、術式による分類を紹介したまでです。

そういえば、何かの講演のときに、超有名な先生がこう言っておられました。
「子供だって10月10日(とつきとうか)待たないといけないんですから、インプラントも3~4か月くらい待ちましょうよ。」

それもひとつの考え方でしょう。
しかし、インプラントが骨と接合するまでの時間を早めたいという考えは、世界的な潮流のようです。私自身は、時間を早めるよりは、数秒でも止まってほしいと考えるのですが、歳のせいですかね?

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2009年04月19日 インプラント 今昔物語 その4

インプラントの表面の加工状態にどういう意味があるのでしょうか?
また、現在主流となっている2回法インプラントの利点、欠点などについて論文を教科書にしながら解説していきたいと思います。

「チタン製インプラント周囲の骨頂部の変化
~イヌの下顎における非荷重の歯肉貫通法および歯肉下埋入法インプラントの組織学的評価~」
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~A histometric evaluation of unloaded non-submerged and submerged implants in the canine mandible~ J. Periodontol. 2000 71(9):1412-24

Hermann JS, Buser D, Schenk RK, Cochran DL

この著者のBuser(ブーザー)先生はスイスの先生で、Buser切開という切開法で有名です。Cochran(コクラン)先生は、テキサス大学歯周病学講座の教授です。テキサス大学に明海大学の学生さんを引率して行ったときに1回だけ名刺交換したのですが、私のことは絶対覚えてくれてはいないでしょう。
このリンクの写真の後ろの方に小さく私の頭が見えます。

開発されてからしばらくの間のインプラントというのは、ネジ山がきってあるだけのツルツルの表面をしたものでした(いわゆるネジ)。その当時のインプラント治療の成功基準は、人工歯冠(アバットメント)を装着後1年以内の骨吸収が1.5 mm以下か、咬みあわせてから1年以降の骨吸収が0.2 mm以下であることとされておりました。もちろん、現在でもこの基準はゴールドスタンダードとなっております。しかし、今でこそインプラントは有歯顎者(歯の残っている人)に多く適応されている治療法ですが、当時は無歯顎者(全く歯の残っていない人)の下顎前歯部への適応ばかりでした。そのため、昔のインプラントの研究報告は、今からみると古くなってしまいました。

そこで、Buser先生とCochran先生は、現在流通しているタイプのインプラントについて、その種類と術式別に研究することを思いつきました。

話しがややこしくなるので、ここからの登場人物ならぬ登場するインプラントの種類を以下に示します。

1ピースタイプのインプラント
2ピースタイプのインプラント

ツルツル表面(機械研磨表面)のインプラント
ザラザラ表面のインプラント

1回法で埋入されたインプラント
2回法で埋入されたインプラント

この論文で使用している表面がザラザラのインプラントとは、Sand-blasted,Large grid,Acid-etched(SLA)処理された表面を持つインプラントのことです。

ここまで書いてみて、あまりの専門用語の多さにあきれてしまいました。しょうがないので、論文の内容に移る前に、用語を解説していかねばならないので続きはそこからにします。

と、ここで突然気がついたのですが、ブログの内容がカテゴリー分けされていないので、このままダラダラ書いていくと、ふんどしみたいな長ーいページになってしまうので改善することにしました。
もしも、このダラダラしたブログを読むのが面倒くさいが、歯周病とインプラントについてまとめて知りたいときは、下の教科書を読んでください。インプラントの項を私が書いております。
(それにしてもアマゾンて何でも売ってるのですね)

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